温和な警備員
2016年 10月 21日
そこの大きな建物の中は、私は何度も出かけているし、スペシャルな場所への入場も過去に許可されていたから、なんでも知っていた。
そして、今回は、久しぶりにそこのスペシャルな場所を訪れたあと、やはりスペシャルな、いやここはマニアックなというべきか、場所を通ってロビーに降りようと思っていたんだった。
そのマニアックな場所というのは、3階の端っこにあって、下のロビーへ幅1mに満たないスリットが入っている場所だった。
いつからか、そのスペシャルな場所に行った帰りにロビーに降りるのに通れることを覚えてしまい、いつもそこを降りていたんだった。
今日は、本当に久しぶりに出かけて、帰り道、身体が自然にそのスリットに向かっていた。
でも、この高さが5mほどあるスリットをどうロビーまで降りていくのかは、実は覚えていない。身体が覚えていて自然に動き、下まで降りていけるんだ。
今日は、ついたての後ろにあるそのスリットのところに足を掛けたところで止まってしまった。
その足を置いた場所には、無数の針のような部品がちりばめられたように置かれていて、いつにないその光景で、足が止まってしまった。
こうなってしまうと、そのスリットから下への行動が自然にはいかない。
頭で考えてしまっているからもう一歩も前には進めなくなってしまった。
ところが、バックしようとしたんだけれど、最初の一歩で重心がスリットの上にきているものだから、どうにもできず、そこに立ち往生してしまうことになってしまった。
困った。泣きたいくらいに困ったことになった。
5m下までどうやっていつも降りていたのかわからなかったから。
そのまま飛び降りたら、大けがをする。さりとて、このままバックもできない。
何時間もそこにいて、とうとう疲れてしまって、私は横に置いてあった厚い布団を手に取って抱きかかえた。
つい、スリットの上でウトウトしてしまった瞬間だった。
気がついたら、ロビーまで降りていた。
どうやって下まで降りたのかはわからなかったけれど、無事にロビーまで降りる事ができていた。
ただ、ロビーは無人ではなかった。
私が気がついた時には、ロビーに布団が散乱していて、その脇に私が倒れ込んでいて、その周囲を人垣ができていたんだ。
私は、もう動けないくらい疲労困憊になっていたので、全く動くことができなかった。
そして、その人垣が割れた時、そこには救急車用のストレッチャーが置いてあった。
その時に、はたと気がついたことがあった。
今日の私のミッションは、大島に行く人のアンケート集計だったことに気がついた。
これでこのまま病院なり大島に返されてしまうと、ここまで戻って来るのが大変だ。
私は重い身体を引きずるようにして起き上がり、周囲の目も気にせず、アンケート票が置いてあるブースを目指した。そして、1枚1枚をめくって、数を数えていった。
人垣は、その数を数えている私のところに移動した。
そして、その作業を中断させるかのように、手をぴっぱり出した。
私は、そんな私の事情を知らないここの職員の手から逃げるようにロビー内を走り出した。
追っ手の職員らは、普段は温和な表情の人達だが、今回は違った。
隙あらば、私を捕まえようという魂胆が見え見えで、顔も歪んでいた。
私はそんな豹変した表情に腹が立った。
私の本当の苦しさをこいつらは知らずに、ただただ捕まえることしか考えていないのかと。
そこで、普段は温和な私も、豹変してみせた。
つまりは、先制攻撃をかけていった。
意表をつかれた職員らは、私の手に掛って、次々と倒れていった。
でも、ここは大きなロビーで職員の数も多かったから、だんだんと追いつめられていった。
出口まで追い込まれた私を待っていたのは、この建物の警備員だった。
警備員のおじさんは、こんな私を見ても普段通りだった。
いつもの温和な表情のままで、私を迎えてくれた。
私は、やっと普段の自分を取り戻すことができて、そこに倒れ込んだ。
そして、眠りにおちていった。
そんな夢を見た。
by WofNaka
| 2016-10-21 09:44
| 夢の話
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