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1961年生れ/東ニ病気ノコドモアレバ…西ニツカレタ母アレバ…南ニ死ニサウナ人アレバ…北ニケンクヮヤソショウガアレバ…/弱い立場中心の世の中に/陸前高田市が故郷 @ja1toe


by WofNaka

六道辻

今日は車で、遠いところに出かけたくなって、目的もなくレンタカーを走らせた。

日が陰って、薄暗くなった頃、海岸にたどり着いた。

この海岸は、山が迫ってきている狭い海岸だった。

道は海のすぐそばまで通っていて、その先は見えなかったけれど、道を進んだ。

最後はもう、左手側がガードレールもなく、その下はごつごつした岩が続いていたし、右手側は崖になっていた。

車1台分の幅しかなかったが、そのままゆっくり進んだ。

このまま、道がなくなってもいいかな、と思っていた。

ほどなくして、道が車の幅よりも少なくなって、これ以上は進めなくなった。



しばらく車の中にいたが、少しだけバックして、車から降りた。

外は肌寒かったから、車の中に置いてあっコートとバッグを取り出して、車の先を徒歩で進んだ。

しばらく行くと、上にある小さな漁村からの別な道と合流、その先には、道の右側が崖ではなく柵になっていた。

そこからさらに進むと、道が波しぶきでドロドロになっていて歩きずらかった。

ちょっと油断しちゃうと滑って、海に落ちそうな、そんな道だった。

柵の向こう側には老いた人が、何人か歩いていた。たまに、こっちを見るけれど、誰も声はかけなかった。

ただ、興味があるといった風だった。


私は足元を気にしながらさらに進んだ。

もう右手には柵がなく、崖までが波しぶきでドロドロになっていた。

この先は、もう道もない。


私は自分が何をしにここまできたのかを計りかねていた。

少なくとも生きようとしてここに来たわけじゃない。それだけはわかっていた。

しばらくして、もう辺りは真っ暗になってしまった。

かろうじて、今来た道だけがわかる。

このまま、ここにいたら、どこかで判断を誤ったり意識を無くしたら最後、ここから滑り落ちて命に関わるのは目に見えていた。

気温も一気に下がってきて、ふと、われに返った。


戻ろう。


慎重に足を今来た方向に向けようとするんだけれど、滑ってしまう。

手を崖に着いても滑ってしまう。

もう、力加減が微妙だった。

ともすれば動けなくなる。

なんとか、少しずつ少しずつ後ろに下がる。

ドロドロの崖から、ちょっとだけ草が生えている崖に取り付くことができた。

今はこの草だけが頼り。力加減では抜けそうだけど。


そのうちに、足が、ドロドロしたところから解放された。

風が強くなってきて、崖から落とされそうな感じだった。

手が何かに触れた。

柵だった。

その木製の朽ち果てそうな柵が私の命のよりどころになった。

気が付くと、柵の向こうに人影があって、こちらを見ている。

いつ落ちるのか、戻れるか、そんな思惑が手に取るようにわかった。

なんとか、さっきの上からの道があるところまでたどり着いた時だった。

海の側から、男が私のベルトを掴んで、そこにいたおばさんに語り掛けた。


いいか、と。

おばさんは言った。 この人は大丈夫な人だから、手を放してあげて。

男は私のベルトを離して解放された。

おばさんは、こっちへ、と私に言った。

寒かったでしょう、さぁ、何があったかしらないけれど、こっちへきて温まりなさい、と。

さっきの男は?

あれ、あれはね、あなたが善良な人なのか悪者なのかを聞いて、悪者ならば海に引きずり込む役の亡霊だ、と。

ここは?

さぁさぁ、こっちに。

ここにきて。

そこは、とても温かい小さい家だった。
真ん中に囲炉裏があって暖かかった。

さぁ、こちらに来て横になりなさい。

私は倒れ込むようにそこに横になった。

さっきのおばさんが、私の濡れた服を脱がしてくれた。
そして暖かいタオルで全身を拭いてくれて。。。



そして、私はその布団の中で。。。


寝物語に言われたことはこんなことだった。

あなたは、まだ、元の世界に戻れたわけじゃないのよ。

さっきの男は、そうね、あなたの世界では閻魔様とか言われる時もあるわね。

どこからか、あなたはこっちの世界に来てしまったのよ。

あなたが知らないだけなの。


この辺りはね、たまに人が迷い込むの。

ほとんどの人は、そのままこっちの世界に残るわ。

あなたは200年ぶりくらいかしらね、この布団で眠れているのは。


この布団に寝れた人は戻れるんですか?

あなた次第ね。

もし、あなたが生きたいと思ったら、そうね、それでも難しいかもしれないけれど、もしかしたら、戻れるかもね。

私はここから元の世界に戻った話は聞いたことはないけれど、近所のおじさんが言ってた。

400年ぐらい前に、ここから海でもこの土地でもなく別な土地に行ったって。
その人は元の世界に戻れたのかもしれないわ。噂だけど。

じゃあ、あなたも、ここに来た人なの?

可愛いわね、あなた。
そうよ。ここに来て、もう長いわね。もっとも年は取らないからここは。

何かつらいことがあったんですね。
そうね。つらかったわ。そのつらさは、ここに来てほんのちょっぴりだけ少なくなったけどね。

今日ね、あなたを見ていてね、あ、この人は、ここの新しい住人になれる人だ、ということはわかったのよ。
でも、ほかのおじさんたちが言うのよ。
いや、この人は、元の世界に戻れる人かもしれない、ってさ。

そうですか。
生きたいと思えば戻れるかもしれないんですね。

簡単じゃないわよ。
私のテクニックから逃れた人はそういないんだから、元の世界ではね。

その声を私は遠い夢の中で聞いていたような気がした。

そして、遠くからおじさんたちの声が聞こえた。

閻魔の方がまだ元に戻れるチャンスがあったかもしれないよな。
あー、そうだな。
閻魔なら即決だったもの。
あの男は、しばらくもて遊ばれて、喰われるかもしれないからな。
まぁ、ここにきたあいつの運命だから仕方がないけどな。ふふふ。
しばらくまた楽しめそうだな。
そうだな、ここは退屈なところだからな。











そんな夢を見た。


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by WofNaka | 2021-01-01 13:04 | 夢の話 | Trackback | Comments(0)